猿の悲しみ 樋口 有介(著)を読んだ感想

主人公は、弁護士事務所に勤める調査員のサエ。敏腕で賢く力も強いスーパーウーマンなのだが、過去に過失致死罪を抱えるシングルマザーで、一人息子を溺愛する弱みと人間味を感じさせる人柄。

あらすじをざっと解説すると、おやじと呼んでいる雇い主の弁護士から二つの案件の調査を依頼されて色々調べていくうちにでっかい山にぶつかって…という感じのストーリーになっています。

ミステリーなんですが、どちらかというとこの話に出てくる人々の人柄に目が行きました。樋口作品によく出てくるタイプの人物がいろいろいて楽しかったです。癖のある老刑事。ひょうひょうとしてつかみどころのない青年。オタクくさいが得意技を持つ青年。生活に疲れてはすっぱな女。あと謎めいた美女とか…。

貧しさ、泥臭さ、庶民のどうしようもないところに主人公の目を通してですが、温かい作者の目線があり、一方、お金持ち・権力者など支配する側は、おっかないもの・得体の知れないものとして、書かれているような気もしました。主人公の性格や行動が歯切れのいいもので、物語自体の幕引きはともかくとしてスカッとするような話ですね。

★四つ~★五つ。

なかなか楽しい本。

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